2026年6月21日
梅雨の合間の晴れが嬉しいですね。植木だけでなく雑草たちも雨でぐんぐん伸びています。庭仕事にも精がでるというものです。
当院には膝の痛みで来院される方も多くいらっしゃいます。変形性膝関節症という疾患について情報を整理してみます。
変形性膝関節症は「膝が痛くて歩きにくい」「水がたまる」などの症状で病院を受診される疾患です。日本では約2500万人(人口の20%以上)が罹患していると言われており、有症状者は約800万人程度というデータがあります(参考文献1)。有症状者だけでも人口の6.5%以上になり、とてもメジャーな疾患と言えます。
膝関節は大腿骨と脛骨と膝蓋骨によって形成されており、骨の間には緩衝材として軟骨があります。この軟骨がすり減っていくことで骨同士がこすれて炎症を起こしたり、痛みが出たりする疾患です。進行すると歩行障害を中心に生活に悪影響を与えるとされています。
発症する要因はさまざまですが、加齢は大きな要因と言われています。女性に多いとされており、長年の使い過ぎ(オーバーユース)や肥満も要因になるとされています。
先ほど、罹患者が2500万人と述べましたが、レントゲン上で何らかの膝の異常が指摘できる人という意味になります。もし街に出てその辺りを歩いているご高齢の方にお願いして膝のレントゲンを取らせてもらったら、全く異常を指摘できない人はほとんどいないのではないかと私は思っています。当院では膝痛で来院された方に基本的には膝のレントゲンを撮りますが、「膝関節の内側が狭くなっている」(関節裂隙の狭小化)や「骨がこすれて硬くなっている」(骨硬化像)は多くの人に観察できます。これらが本当に膝痛の原因になっているかは痛みの場所や痛くなる動作、腫れや水腫等の痛み以外の症状と合わせて診断していきますが、「何らかの異常がレントゲン画像上で膝にある」状態は決して珍しいものではないのです。疾患や病と言われるとショックを受ける方もいるかもしれませんが、ある程度加齢性の変化として「最近しわが出てきた」や「白髪が目立つようになってきた」と同じように捉えて上手に付き合っていくことが大事になってきます。
変形性膝関節症に対する治療
変形性膝関節症との上手な付き合い方をお手伝いするのが当院の役割になります。画像上で進行度を確認して治療方針を決めていきます。
①消炎鎮痛療法
痛み止めや湿布を使用して痛みを和らげる治療になります。痛みの原因が一時的な炎症の場合はこの治療をしばらく続けることで良くなり、薬を止めることもできます。慢性的な炎症の場合も内服を続けることで症状を抑えながら生活することは可能です。
②関節注射
膝関節にヒアルロン酸を注射することで炎症を軽減させたり、関節の滑りをよくすることで症状を和らげる効果が期待できます。症状によって2週間に1回の関節注射から徐々に
間隔を空けて頻度を減らしていくことはできます。
③装具治療
膝関節の変形が進んで来るとO脚になり関節の内側に負荷がかかりやすくなります。足底板というインソールを作ることで膝への体重のかけ方を変えることで傷んでいない外側に圧を逃がすことが有効な場合もあります。
④リハビリ加療
膝関節周囲の筋力を上げることは膝関節の安定性を高め、症状を和らげることが期待できます。本来の膝が持つ可動域を再獲得することで膝が曲がらないためにできなかった動作をできるようになります。痛い場所にレーザーや超音波を当てることで痛みを和らげる物理療法も効果があるようです。
以上に挙げたものが一般的に保存的加療と言われるものです。元々の関節を長持ちさせることで関節変形と上手に付き合っていく方法になります。残念ながら一度傷んだ軟骨を元通りに修復する方法は現在では確立されていません。再生医療の進歩に期待したいところではあります。
⑤手術加療(人工膝関節置換術)
もっと根本的に治したい!スムーズに歩けるようにして欲しい!病院に通わなくて良いようにして下さい!と言われた方に対して私が一番にオススメするのが、当院で実施している「ラジオ波焼灼療法」・・・ではなく人工膝関節置換術の手術加療になります。
数カ月前まで手術加療で患者さんの歩行機能や痛みの改善を目の当たりにしてきた外科医の意見としては手術加療への信頼は厚いです。傷んだ軟骨と骨を切除して人工のインプラントに入れ替えてスムーズで痛みのない関節に作り直すことで症状を大部分軽減させることができます。入院と費用は必要になりますが、確実に治すというならこの方法だと思います。15年前に私が医者になった頃から同じ手術はありましたが、日進月歩で手術のアプローチや術後のリハビリ法、手術で使用するインプラントの改良が加えられている分野だと思います。耐用年数について「20年前のインプラントが6人に1人程度入れ替え手術を必要とした」というデータが出ていますが(参考文献2)、20年前より現在は良いインプラントが使用されており、術後成績や耐用年数はさらに上がっています。これだけ勧めていますが、当院では手術はできないので、術後の適切な管理や何か問題があった際に対応してもらえる信頼できる病院宛てに手術をお願いする紹介状を書かせて頂いています。
⑥ラジオ波焼灼療法
他院で手術加療を勧められたけれど、手術はできるだけ避けたい!膝の注射を続けているけど、なんだが良くなる感じがしないから何とかして欲しい!という人に満を持して(?)登場するのが当院で実施しているラジオ波焼灼療法です。手術加療と保存的加療の間に位置する治療になると考えています。膝関節の変形そのものを治すわけではありませんが、痛みを感じる神経を熱で焼いて麻痺させることで疼痛を軽減させます。スムーズに歩きたい、病院に通う頻度を少なくするという希望は叶えることができます。侵襲が小さく、日帰りの処置で対応可能なので保存的加療で効果が乏しくて困っているが、入院しての手術はちょっと…という方に適しています。ラジオ波焼灼療法については以前にこちらのコラムに書かせていただいております。ご一読いただければ幸いにございます。
以上のようにいろいろな治療法を提案することができます。患者さん本人やご家族で詳しく相談したい方にはできるだけ丁寧な説明を心がけるつもりなので、変形性膝関節症と上手に付き合う方法を一緒に考えていきましょう。
参考文献
1)変形性膝関節症診療ガイドライン2023
2)Adbel MP et al. Effect of postoperative mechanical axis alignment on survival and functional outcomes of modern total knee arthroplasties with cement. J Bone Joint Surg Am 2018:100:472-8
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さとう整形外科